(2) 次に、神奈川の図を見ると、今次流行のピークは1月18日、すなわち、東京のピークの1週間後となっている。同様の観察を埼玉、千葉について行うと、神奈川よりさらに数日後にピークを付けていることが分かる。
すなわち、政府の分科会では、東京圏等の大都市圏から地方への流行の"染み出し"、という認識を示しているが、東京圏の内部においては、東京における流行が先行し、神奈川、埼玉、千葉へ染み出している、という理解にならざるを得ないのである。前回示した人口密度を一極集中の代理指標とする発生者状況の図は、現在でも大きく変わることはなく、何としても東京の流行を抑え込むことが喫緊の課題である。(注)
(注)東京圏1都3県における2021年1月7日現在の累計感染者数(NHK調)は、東京103,845人、神奈川42,280人、 埼玉26,709人、千葉23,721人となっている。一方、3県から東京への昼間流入人口は(2015年国勢調査、東京 都調)、神奈川から1,068千人/日、埼玉から936千人/日、千葉から716千人/日となっており、東京へ行く人数 の多さと感染者数が明らかにパラレルな関係となっていることは一つの傍証となろう。
(3) 菅総理が、官房長官時代に、新型コロナの問題は、東京問題だ、という意味の発言をし、筆者など全くその通り、と思ったのであるが、小池都知事はこの発言に猛反発した。都知事は事の重大性と本質を全く弁えないと言わざるを得まい。その後も、都知事は、一都三県は一体であり、共同歩調をとるべきだなどと言う姿勢であるが、もちろん協力して対処すべき場面も少なくないとしても、3県知事を従えた記者会見などを見ると、国の責任を印象付けようとする一流のパフォーマンスに見え、基本的に東京が流行を抑え込まなければならない東京問題であることを意識的に看過しているように思われる。また、今回の感染爆発を前にして、国が緊急事態を宣言するのが先だ、といった理屈で、他県では独自に行われている飲食店等の自粛要請を行わなかった点は、やはり東京の重要性を看過していると言わざるを得ず、実は都民の方は見ていない、という印象を禁じ得ない。政治家としての思惑や確執をこのような場面に持ち込んでいるとしたら、甚だ遺憾である。(2021.02.08)
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